肺動脈絞扼術が終わり、退院後に気をつけること

家族の歩み

生まれてすぐに「房室中隔欠損症(ぼうしつちゅうかくけそんしょう)」と告知され、およそ1ヶ月半もの間、ヒナちゃんは病院にお世話になっていました。

”先天性心疾患”と言う事実を受け入れることに、僕ら親は時間がかかりましたが、それでも前を向いて家族全員で向き合っていこうと決めました。

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房室中隔欠損症の告知から退院までの流れ

9月某日、ヒナちゃんは生まれました。

そして数日後、「心臓から雑音が聞こえる」との医師の一言からいくつかの検査をしてみたところ、ヒナちゃんは房室中隔欠損症と言う病気を発症していると言うことがわかりました。

僕らはヒナちゃんが生まれた喜びに浸る間もなく、地獄のどん底に突き落とされたような感覚に陥りました。

肺動脈絞扼術

「このまま放置しておくと心不全になり、やがては最悪の結果になる」

そう担当の先生に告げられたヒナちゃんは、すぐに肺動脈絞扼術(はいどうみゃくこうやくじゅつ)と言う手術を受けることになりました。

肺動脈絞扼術とは、肺動脈(主肺動脈)の周りにリボン状のテープを小さく巻いて、肺動脈を細くすることによって、肺に血液が流れすぎないようにする手術です。

人工心肺を仕様しての修復術を行うためには、手術に耐えられるだけの心臓の大きさになっていることが条件のため(体重約10kg程度)、それに満たない場合に肺動脈絞扼術を行います。

要は、生まれたばかりの小さな赤ちゃんは、心臓手術に耐えることができないので、応急処置的な手術を行うと言うことです。

ヒナちゃんは、無事に肺動脈絞扼術を終えて、6時間後には僕らに再会することができました。

合併症の発症

比較的安全な手術とはいえ、術前には「様々な合併症が起こる可能性がある」と言われていました。

その中の1つに「胸水の可能性」もありました。

術後数日までは順調に回復していたヒナちゃんでしたが、心臓のまわりに水が溜まる「心膜切開後症候群」を発症してしまいました。

心膜切開後症候群(しんまくせっかいごしょうこうぐん)とは、心臓の手術を行った後に何らかの原因により、心膜と心臓の間に心嚢水(しんのうすい)と言われる水が溜まってしまう症状を言います。

これを放置しておくと、心臓が心嚢水によって肥大し、全身に血液を送ることができなくなって、重篤な状態に陥ってしまいます。

内科的治療

心膜切開後症候群の治療には、まず内科的治療が行われます。

アスピリンやステロイド、利尿剤などの投与によって心嚢水の減少を促します。

しかし、数日間の内科的治療の結果、心嚢水の減少が少なかったため手術をして心嚢水を抜くことになりました。

心嚢ドレナージ手術

心嚢ドレナージ手術は心嚢穿刺(しんのうせんし)術とも言い、心臓と心臓の筋肉の間にある心膜腔に溜まった心嚢水を除去する手術です。

具体的には、ヒナちゃんは以下のような手順で手術を行いました。

  1. 肺動脈絞扼術の正中創下端を再切開
  2. 癒着を剥離
  3. 心嚢膜を切開
  4. 心嚢水の排液
  5. ドレーンを1本留置
  6. 閉創

退院後の注意事項

心嚢ドレナージ手術を無事に終えたヒナちゃんは、先日、1ヶ月半もの入院生活を終え、退院することができました。

ここまで、ジェットコースターのような展開であっという間でしたが、これでひと段落です。

しかし、退院後にも注意しなければいけないことがあります。

感染症への注意

冬場は乾燥もしますので、風邪などの感染症には注意が必要です。

肺動脈絞扼術を行い、心臓への負担が少なくなったとは言え、風邪などの感染症にかかってしまうと体力が奪われ心臓に負担がかかってしまいます。

特に退院から2週間くらいは外出も控え、外部の人間との接触も極力控えるように指導されました。

手術跡への注意

手術跡の抜糸はされていますが、それでも沐浴などには注意が必要です。

傷口にお湯がかからないように(特に洗った後の汚れたお湯)、サランラップなどで手術跡を覆います。

心配な場合は下半身のみの沐浴にし、上半身はお湯に浸したタオルで拭いてあげるなどの工夫をします。

必要以上に泣かせない

赤ちゃんは「泣くのが仕事」と言われますが、退院後のヒナちゃんは必要以上に泣くことを避けなければいけません。

先生に「赤ちゃんが泣き続けることは、短距離走を走ったのと同じくらい疲れること」と聞き、これが心臓に負担をかけてしまうと教えてもらいました。

とは言え、赤ちゃんは泣きます。

  • お腹が空いて泣く
    → すぐに抱っこして母乳をあげる
  • おしっこで泣く
    → すぐにオムツを替えてあげる
  • うんちで泣く
    → すぐにオムツを替えてあげる
  • 寂しくて泣く
    → 抱っこして落ち着かせる

このように、大切なことは「すぐに泣いている状況を改善させてあげる」ことです。

長時間泣かせてしまうことで心臓に負担をかけてしまうので、なるべく泣き続けることのないよう注意します。

次の手術に備えて

房室中隔欠損症の治療は長く続きます。

肺動脈絞扼術を行っても、根本的な解決にはなりません。

心臓の修復術を行って、それでも将来的にはさらに心臓手術が必要になる可能性があります。

ヒナちゃんが次に備えるのは、体重が10kgを超えたくらいで行われる心臓の修復術です。

肺動脈絞扼術を行ったことで、呼吸が楽になり、母乳を飲むことが楽になり、体重が増えていきます。

体重が増えていくことで、修復術に耐えるだけの体力もつきます。

しかし、基本的には心臓に負担のかかることは避ける必要があるかもしれません。

難しい生活になりそうですが、家族一丸となって、この現実と向き合っていこうと思っています。

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