ここでは房室中隔欠損症(ぼうしつちゅうかくけっそんしょう)の基本的な情報をまとめていきたいと思います。
主に医療機関などで説明されている内容をわかりやすく(引用を含め)まとめていますので参考にしてみてください。
房室中隔欠損症とは
房室中隔欠損症とは、心房と心室それぞれの中隔に穴(孔)が開いている病気で、先天性心奇形の約5%を占め、患者の約30%でダウン症候群が認められます。
この穴が別々に存在しているわけではなく、心房と心室を繋ぐ境目に穴が開いていることから、完全型と言われる場合があります。
我が家のヒナちゃんはこの完全型に該当していますので、ここでは特に完全型について解説していきます。
房室中隔欠損症の症状
生まれたばかりの新生児の場合、聴診器などで心音を聞いた時に”雑音”があることなどでその異変に気がつくことがあります。
ヒナちゃんの場合もそうでした。
そして、心電図や胸部X線検査などの結果から診断確定となります。
出産直後の赤ちゃんは肺で呼吸することが少ないため、肺に血液が流れにくい肺高血圧の状態になります。
この時期を過ぎると、心臓の中の穴(心房中隔欠損・心室中隔欠損)を通って、肺にたくさんの血液が流れるようになります(高肺血流)。
その結果、
- 呼吸困難(心不全)
- ミルクが飲みにくくなる
- 体重が増えない
- 心房と心室の間の弁(房室弁)の以上により血液が逆流し、さらに心不全が悪化
と言う状態となり、長期間放置しておくと重症の肺高血圧症となってチアノーゼ(低酸素血症:静脈血が動脈血に混ざるようになって、血液の中の酸素が少なくなる状態)が出現するようになります。
ここまでくると治療が困難になってしまいます。
房室中隔欠損症の治療方法と術後の経過
房室中隔欠損症の治療方法
特に完全型の場合、生後2~3ヶ月で高度の心不全状態となりますので、なるべく早い段階での外科的治療(手術)が必要となります。
画像引用元:東大病院小児集中治療室「房室中隔欠損症」
利尿剤や血管拡張剤、強心剤
手術を行う前に、心不全を起こさないように管理するため、利尿剤や血管拡張剤、強心剤などを投与します(内科的治療)。
これらの内科的治療によって手術までの期間、赤ちゃんの体の管理を行います。
肺動脈絞扼術
新生児などの場合、まず最初に受ける手術は肺動脈絞扼術(はいどうみゃくこうやくじゅつ)です。
まだ手術に体が絶えることができないため、まずは肺の血流を抑えることが目的です。
具体的には、以下のような手術となります。
- 肺動脈の周りにリボン状のテープを巻く
- 肺に流れる血液量を抑える効果がある
- 人工心肺は体力的に問題があるので使用しない
この結果、呼吸困難(心不全)が改善し、ミルクを飲む量が増えて、体重が増加します。
修復術
体重が手術の目安となる10kg近くまで増えたら、欠損している弁の修復手術を行います。
人工心肺を用いて房室中隔欠損孔をパッチで塞いで心房・心室を左右に分け戻し、それによって左右に分けられた共通房室弁についても、合せ具合が悪く逆流が多い場合には弁の形成を行います。
術後の経過について
内科的治療、外科的治療(肺動脈絞扼術、修復術)を終えたら、普通のこと変わらない生活に戻れることが見込まれますが、定期的なアフターケア・フォローアップが必要になります。
手術の後は人工心肺を使用した影響による体のむくみを取るために数日ないし数週間、利尿剤といっておしっこの出をよくする薬を用います。
手術直後は、人工心肺の影響などから、一時的に肺高血圧の増悪を来す場合もあり、注意が必要です。一酸化窒素といって肺動脈の血圧を下げるガスの吸入を必要とする場合もあります。
多くの場合は正常児に近い発育発達が見込まれますが、手術後に、肺高血圧継続、僧帽弁逆流の進行、左心室の出口の狭窄の進行、不整脈などを来すことがあり、定期的なフォローアップが必要です。場合によってはなんらかの内科的治療、外科的治療を必要とすることがあります。