ヒナちゃんがエレベーターに消えて行った後、僕らはまたあの何とも言えない時間を過ごすことになります。
心嚢ドレナージ手術に向かうまで
ヒナちゃんは、生まれてすぐに房室中隔欠損症(ぼうしつちゅうかくけっそんしょう)と診断されました。
先天性の心臓の疾患で、そのまま放置すると心不全となり、最悪の場合は死に至ります。
これまでの経緯
そこでヒナちゃんは、肺に流れる血流を少なくするために肺動脈絞扼術と言う手術を受けることになりました。
この手術を終えると、ヒナちゃんは呼吸が楽になり、2週間で退院ができるはずでした。
ヒナちゃんの心臓のまわりに、心嚢水(しんのうすい)と言う水の量が増えていたんです。
この心嚢水はもともと存在するものなのですが、これが増えてしまうと心臓が拡張してしまい、全身に血液を送ることができなくなってしまいます。
心膜切開後症候群と言うんですが、こうなると心嚢水を減らす処置を行うことになります。
薬の投与による内科的治療で心嚢水が減らなかったヒナちゃんは、心嚢ドレナージ手術を行うことになったんです。
手術が終わるのを待つ「あの」時間
前回の肺動脈絞扼術のときもそうでしたが、この手術が終わるまでの時間は、長いようで短い、何とも言えない感じがします。
僕らにできることはなく、でも早く終わって欲しい、無事に終わって欲しいと祈るばかり。
途中、ママはヒナちゃんのために搾乳に向かいます。
その間は、僕は1人で病院の待合室で窓の外を眺めたり、スマホを見たり、目をつぶったりしていました。
何をやっても落ち着かないんです。
でも、何をどうしても、どうにもならないんです。
心嚢ドレナージ手術を終えて
看護師さんから渡されていた、手術の終わりを告げるポケットベルは搾乳中のママが持って行きました。
そのママから僕のスマホに着信があり、ポケットベルが鳴ったと連絡がありました。
手術後の容態
NICUに戻って色んな検査を終えたヒナちゃんに会えるまで、それから20分ほどかかりました。
前回の手術よりはましですが、それでも少し顔が浮腫んでいます。
それでも、手術をしてすぐに検査の項目は正常に近くなり、すぐに手術の効果が出てきました。
こんなにも効果が出るなんて、先生たちの決断は間違っていなかったと、僕らはやっと心を落ち着かせることができました。
「ヒナちゃん、頑張ったね」
僕らは何度もヒナちゃんの頭をなでていました。
心嚢ドレナージ手術から退院の流れ
退院までの流れは驚くものでした。
もっと退院まではかかると思ってたんです。
「問題がなければ10日ほどで退院ですね」
もちろん、また心嚢水が増えてこないとも限りません。
そうはならないことを願うばかりですが、術後の安定感を見るとこのままいってくれそうな気もします。
日に日にヒナちゃんの体から1本、また1本と管が抜けていきます。
手術から1日で、もう口から哺乳瓶で母乳を飲むことができるようになりました。
心嚢水が溜まらないように水分量の調整は必要ですが、それは利尿剤などで調整してくれるみたいです。
しっかり治して退院して欲しいけど、でも早く時間が過ぎて欲しい・・・
こんなことを毎日思っています。
ヒナちゃんを我が家に向かえる準備はできています。
少しでも元気になって、お家に帰ってきてね。